性格心理学基本図書紹介

 

高良武久 『性格学』 三省堂 1931(昭和6年)

 精神医学者によって書かれた1920年代,30年代のドイツ性格学の紹介,解説書である。クレッチマーの学説が詳しく述べられ,ほかにアップェルバッハ,ホフマン,エーワルト、クラーゲス,シュナイダーなど英語圏の書物には登場しないドイツの学者たちの考え方が示されている。昭和28年には白揚社から増訂版が刊行された。(詫摩武俊)


正木 正・依田 新『性格心理学』 同学社 1951

 筆者はともに昭和4年,東大心理学科の卒業生で,ドイツの性格心理学に大きな関心をもち,1937年,刀江書院より本書の旧版を刊行した。戦後,アメリカのパーソナリティ研究の成果も加えて執筆したのが本書である。性格心理学の立場と方法,性格心理学の形態、性格の表現と理解,教育と性格の4編より構成されている。(詫摩武俊)


佐藤幸治『人格心理学』 創元社 1951

 心理学全書の1巻である。人格の見方,人格心理学史,人格研究の方法,人格の成立機構,人格の構造,人格の形成,理想的人格などの章で構成されている。広い内容を持った本で,引用された文献も人名も多い。欧米だけでなく東洋の考え方も述べられている。(詫摩武俊)


高橋和年『性格学概論』 非凡閣 1951

 ドイツ性格学の概説書である。第一編は生物学的性格類型論でクレッチマー,イエンシュ,ユング,エーワルト,プァーラー。第二編は精神科学的性格類型論でクラーゲス,シュプランガー,ディルタイ等が述べられている。イエンシュを中心としたマールブルグ学派の性格研究を紹介した本は少ない。(詫摩武俊)


宮城音弥『性格』 岩波新書 1960

 性格に関する書物の中で多数の人に読まれた本である。性格の類型,性格の形成,文化と性格,性と性格,性格の診断,筆相・手相・人相などの章がある。逸脱した人を通して健常な人を研究しようとする病理学的研究法が述べられ,フランスの学者の業績が随所に紹介されている。(詫摩武俊)


依田 新『性格心理学』 金子書房 1968

 筆者の名古屋大学,東京大学等における講義をもとに書かれた書物である。性格心理学の歴史が詳しく述べられている。若い時期のドイツ性格学に対する傾倒から,戦後アメリカのパーソナリティ理論に関心をもつようになった経緯が述べられている。あとがきは筆者の研究者としての自叙伝である。(詫摩武俊)


北村晴朗『新版 自我の心理』 誠信書房 1977

 性格心理学にとって重要な自我・自己の概念を歴史的に考察し,規定しようとしている。ジェームズ,フロイト,オルポート,リップス,レヴィン,レルシュなどの学説が著者の考えに基づいて述べられている。『自我の心理・続考』(川島書店,1991)もある。(詫摩武俊)


詫摩武俊(編)『性格の理論(第2版)』 誠信書房 1978

 フロイト,ユング,アドラー,新フロイト学派,クレッチマー,レヴィン,オールポート,キャッテル,アイゼンク,マーフィ,マレー,ゴールドシュタイン,ロジャースとジェンドリン,学習理論,役割理論,文化人類学,フランス学派,ソ連の性格心理学の18章よりなり,それぞれの性格理論が述べられている。(詫摩武俊)


戸川行男 『適応と欲求』(1956), 『臨床心理学論考』(1971), 『自我心理学』(1972), 『人間学的心理学』(1978), 『意志と性格の心理学』(1979) 5点とも金子書房

 人間の行動,人間の性格とは何かをつねに問題意識として抱いていた著者の著作である。しかも,外国の学者の紹介や引用ではなくて著者自身の思索に基づく独創性のある議論が展開されている。上記の他に『性格の構造』(1944),『性格の類型』(1949)という著書もある。(詫摩武俊)


岩波講座 精神の科学2『パーソナリティ』 岩波書店 1983

 この講座は,全10巻,別巻1よりなる。編集委員は飯田真,笠原嘉,河合隼雄,佐治守夫,中井久夫である。この巻には概説に続いて,フロイト・クライン・ユンク,人格の成熟と変化,人格における特性論,病気と人格,人格の病,ヒューマニスティック・サイコロジー,人格論における対極性の章が含まれている。(詫摩武俊)


詫摩武俊(監修) 鈴木乙史・清水弘司・松井豊(編集)
『パッケージ 性格の心理(全 6巻)』 ブレーン出版 1985〜86

 「性格の発達と形成」「性格の変化と適応」「問題行動と性格」「性格の諸側面」「自分の性格と他人の性格」「性格の理解と把握」の6巻に,それぞれ約20編の性格心理学のトピックスが述べられている。ひとつひとつが独立しているのでどこからでも読むことが出来る。(詫摩武俊)


本明寛他(編)『性格心理学新講座(全6巻)』 金子書房 1989〜90  「性格の理論」「性格形成」「適応と不適応」「性格の理解」「カウンセリングと心理治療」「ケース研究」と題された6つの巻でこの講座は構成され,どの巻も20人前後の研究者が分担して執筆している。1960年に性格心理学講座全5巻が刊行されている。新講座はこれに比べて取り上げられたテーマが拡大している。(詫摩武俊)


藤永 保『思想と人格』 筑摩書房 1991

 人格心理学への途という副題がついている。パーソナリティ理論,知性と感情,認識と情動,意見と適応,自我同一性,思想の創造,権威主義的人格,認知体制と人格の8つの章よりなっている。狭い意味の性格ではなくパーソナリティの諸問題が広い視点から論じられている。味読すべき重厚な書物である。(詫摩武俊)


ロータッカー,E.(北村晴朗監訳)『人格の成層論』 法政大学出版局 1995

 性格や人格がさまざまな心の機能の層からなっているとする層理論を代表する著作。1938年の初版以来50年にわたって9版を重ねた。今日でもなお心理学の多様な領域に新しいアイデアを刺激する可能性を持っている。(大久保幸郎)    

 
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