ミニ特集*学会への一言
日本性格心理学会の思い出療法
藤田主一(城西大学女子短期大学部) sfujita@josai.ac.jp

 手元にある「日本性格心理学会ニューズレター:No.15」(2002年10月1日発行)の巻頭言「これからの10年」の中で、副理事長の青柳肇先生は過去を振り返り、未来を思いつつ次のように述べています。「正確には覚えておりませんが、最初は 100〜200 名の会員でスタートした……10回大会のプログラムはずっと厚くなり……会員数はようやく 600名を越え……機関誌も年2回の発行に……理事会では学会名の改正や学会の研究活性化のための組織の見直しも検討……これからの10年を学会員の皆様にとって魅力的な学会に……」と。ここで、本学会設立当初を思い出しながら、夢見る明日の学会を考えてみましょう。

 本学会の前身である性格心理学研究会の正式な第1回例会は、1991年5月11日(土)に日本大学文理学部を会場に開催されました。代表に詫摩武俊・大村政男の両先生、テーマは「心理学諸分野における性格概念」というもので、参加者は約30名でした。そのときの開催通知には、第2回以降に取り上げたいテーマとして丁度60項目がリストアップされていました(もちろん、ほとんどは幻でした)。そのすべてが広い意味での「性格」の領域に関するものでしたが、各テーマ(第1回を含めて)の中に「性格」「人格」「パーソナリティ」などの言葉がいくつぐらい入っているかを眺めてみました。すると性格=18、人格=6、パーソナリティ=1という結果になりました。パーソナリティという語は「文化とパーソナリティ」で使用されていますが、それ以外には見当たりません。文化と性格ではシックリしないし、文化と人格でもマッチしないのでしょう。例会も6回を数えていよいよ本学会の誕生となったのです。

 日本性格心理学会の設立発起人会議は、1992年6月6日午後4時から日本大学文理学部で開催されました。学会設立に賛同した設立発起人(世話人は上記の両先生)は名簿によると 237名で、当日出席した発起人数は約80名でした。会議のプログラムは省略しますが、設立趣意書(以後の入会案内)には、「性格の問題はわれわれの日常生活とも深くかかわり……性格の研究は関連する領域が広く……性格あるいはパーソナリティの問題に関心をもつ人……独自性のある研究活動を重ねていきたい……」と述べられています。ここからも、研究テーマとして「性格」を前面に出していこうという意気込みが見られます。学会会則(目的)にある「性格心理学およびその近接領域」の表現は、当時としての衆知の結集だったと思われます。ここでも、学会名称を何とか定着させようという意思が見受けられます。発起人がそのまま正会員になったかどうかは不明ですが、多分そうでしょう。

 会議の後は楽しい懇親会です。乾杯に続いて、わが国の性格研究のリーダーたちが次々と挨拶しています。現副理事長の青柳先生もにこやかに話しています(写真:肖像権はお許しを)。きっと10年後の在り方などを、ユーモアたっぷりに語ったのでしょう。第1回大会がこの年の11月1日〜2日に行われました。これも記録によると 247名の参加者があって大盛会でした。この1年は、まさに本学会の発展を暗示するかのような晴れやかな年であったと言っていいでしょう。今日、会員数も大会発表件数も、そして機関誌の発行回数も2倍になりました。

 さて、現会員諸先生は本学会の10年の歩みをどのようにお考えでしょうか。燃えていたあの頃をさらに膨らませようではありませんか。最後に1〜2の愚見を許されるのなら、目をつぶり闇に向かってつぶやいてみます。

 1つ目は「日本性格心理学会」の名称変更についてです。この件は、同ニューズレターの中に現理事長の松山義則先生のご説明があります。会員曰く「この名称は、当学会で扱う領域をすべて網羅しているとは言えない、意味が狭い、英文と和文が対応していない、名称変更で会員数の増加につながる……」とか。もちろんそのとおりです。年次大会の研究発表を見ると、性格研究の周辺領域もありますが、学会設立趣意書はこれらを踏まえて作成されたものと小生は解釈しています。何でもありではないという意味です。今後、会員諸先生の議論により、もしかすると「パーソナリティ」という名称がついた学会名に変更されるかもしれません。そうなれば小生も賛同しますが、それまでは今の名称を大事に大事にしていきたいと考えています。  2つ目は、研究発表についてです。機関誌の編集方針は「あらゆる方法・スタイルを受け入れる、研究テーマ自体の面白さを軽視しない、個性的で新しい機関誌を作る」というものだったように思います。他の有力学会のミニ機関誌、あるいは掲載の確率が高いという理由から投稿するのであれば、この編集方針は崩れてしまいます。レベルを維持しながらも、かなり柔軟に掲載されたり、本学会ならではの特集を組むなどの独自性が盛んになることを祈ります。年次大会も同様です。発表論文が集まらないという声も聞こえてきますが、これとても有力学会のミニ化であって、それ以上の魅力がないという症状なのかもしれません。お決まりのシンポ・講演・研究発表・懇親会のほかに、何かプラスアルファもほしいです。また、学会と地域(社会)との連携、社会への還元研究なども面白そうです。会員諸先生の意識も動かして、広く性格のテーマについて、他の学会以上の成果(研究)をバックアップする体制作りを考えていただけませんか。

 ああ、なんてばかなことを書いているのでしょう。でも、小生は思い出を語りながら、自分を癒しているのです。この学会が好きだったのに気づいたのです。


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