ミニ特集 現場からみたパーソナリティT
企業におけるパーソナリティ心理学の活用
片岡大輔(鞄本能率協会マネジメントセンター)

 企業におけるパーソナリティ心理学の活用の一方法としてパーソナリティテストをここでは取り上げたいと思う。パーソナリティテストの活用の場面は2つに分けることができる。すなわち、選抜・処遇の場面と教育・育成の場面である。前者の主な場面は入社選抜である。パッケージ化された市販の入社テストは、知的能力検査・性格/興味検査のバッテリーであるものが多い。知的能力検査の部分の結果は採用・非採用の基準として用いられ、性格/興味検査の部分の結果は、受験者のひととなりを理解するものとされ面接等の補助として用いられることが多い。後者の主な場面は研修である。研修参加者は事前に質問紙に回答し、その結果を研修中でフィードバックされ、各種のセッションの中で自己の気づきに至り、行動の変容が促されるとされている。
 企業向けのパーソナリティテスト的な商品は数多い。商業目的のテストは大学の授業ではとりあげられないがその数はおそらく50〜60以上あるだろう。そのなかには毎年数十万人が受験する標準化されたものもある。項目反応理論を導入したり、IT技術を応用した新しいテストも開発・提供され始めている。しかしながら心理検査の要件を満たしていることを公表している商品は限られている。一般に、購買/導入を行う人事部・総務部の担当者は、心理検査の品質の基準についての情報を持っていない。信頼性・妥当性といった基本的な概念ですら知る人は少ない。パッケージとしてきれいにまとめられたテストをみて、そのテストの「テストとしての品質」について疑問をもつ人はごくまれである(「診断」として表示される内容・値段・実施のしやすさに目が向きがちである)。企業におけるパーソナリティテストの作り手と使い手の間の情報の非対称性には深刻なものがある。
 テストの提供者の中には、業界団体(例:日本人事テスト事業者懇談会・会員24法人/2004年現在)を結成し、適切なテストの提供や活用について活動を行っているものもある。心理検査の要件を満たし顧客の要求に応える商品としてのパーソナリティテストを開発することが提供者側に求められ、テストの品質を査定し効用と限界を見極め、受験者の利益になるようにテストを活用することが使用者側に求めれることは言を待たない。残念ながら、現状はそれを十分に満足するものではない。学術側と実務側の両者がこの状況の改善に貢献する余地は未だ大きい。


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