ミニ特集 現場からみたパーソナリティT
環境保護と心理学(?!)
有川美紀子(環境NGO小笠原ネイチャーフォーラム代表)

 「心理学」と聞くと、TVワイドショーを思い出す。何か不可解な事件が起こったとき、「心理学者」(と名乗る人)が犯罪者の心理を代弁したり分析したりしているからだ。
 いつも、それは事件が起こった後に行われる。「なぜ(犯人は)そんなことをしたのか?」という世の中の疑問に答えるために、何らかをコメントしているようだ。だが、そうした作業が新たな事件の予防になっているのかというと、心理学に携わっている方には申し訳ないけれど、あんまりないように私などには見えてしまう。
私には「学」とは「後から追っかけるもの」であり、現在起こりうる変化には無力なのだろうか? という疑問が常にある。
 というところから、一般人(私)が心理学という学問を必要と思うのはどういうときなのだろうかと考えてみた。
私は小笠原諸島に関する環境NGOを主宰しており、島の環境保護や、住民たちが尽力している地域づくりをサポートする「外部関係者」として活動している。その一環として年に1〜2回程度、島住民との協力作業や交流に重きを置いたエコツアーを開催し、その都度、十数人の人々を率いて小笠原へ出向いている。
 ツアーに参加してくるのは、ほとんど初対面の人々である。こちら側としては、ほかに類を見ない特殊な小笠原の自然を感じ、そこから環境全般への活動に関わっていってほしいという狙いがあるのだが、毎回環境保護クソクラエ的なキャラクターの人間がいないかどうか、冷や冷や(あるいは期待)する。
 今まで100人弱の人々を案内しただろうか。驚いたことに、「エコツアー」と言って募集しているからか、「こんな島は2度と来たくない」という反応は皆無で、「よかった」「自然を守る活動をしている島の人々に感動した」というリアクションばかりなので、逆に拍子抜けするほどである。
 思うに、どうやら日頃環境保護にまったく関心がなく、過剰な消費生活をしている人も、小笠原に来ると、「豊かさとはお金だけではない」「自然は重要だ」といった意識を持つようになるようなのだ。小笠原は、本当の生きかたとは? というようなことを考えるきっかけを与えてくれる場所であるらしい。そこに、なにか性格的な起因があるのだろうか? 変わらない人もいるのだろうか? もともと持ち合わせた性格に小笠原が何か変化をもたらすことが、ありうるのだろうか? それとも、眠っていた性格が、小笠原で甦る、とか?
 理由の断片は思いつくものの、私にはそれを組み立て、分析する能力はない。
 こういうときこそ、性格心理学のヒト、I wants!なのだ。ツアーに参加する人々はどんな日常でどんなことを考え、小笠原に何を求めているのか。実際に小笠原を体感する中で、どんな風に日頃の自分を振り返るのか。その分析は「後から追いかけ」なければできない上に、読み解くことで将来に活かすことができる作業でもある。誰か、そういうことをして欲しい!
 自然科学は一つの結論を出すのに時間がかかるけれど、もし、私が心理学の領域を誤解していなければ、心理学って、いちばん世の中と動きを共にしている学問なのかも! と思う。 …
…違いますか?


Homeへ戻る 前のページへ戻る