人生の意味の概念整理
レビューを進めていくと、「人生の意味」の意味に関しては、哲学的な論考でも、心理学や社会学の調査でも、大別して二つの異なる立場が見られることがわかってきました。すなわち、人生の意味は「私(たち)が創造するのか」、それとも「世界や神から与えられるのか」、という二つの立場です。これらは、主観的意味と客観的意味、個人的意味と宇宙的意味、地上的意味と究極的意味というような対比で捉えられてきました。そこで、私は、主観的・個人的・地上的な意味を、「生活の意味(meaning
in life)」、客観的・宇宙的・究極的な意味を「人生の意味(meaning of life)」という用語でまとめ、「生活の意味」を「人生の意味」が包含する入れ子モデルで捉えることにしました。また、意味をいまだ問わない「前意味」、意味の否定としての「無意味」、全ての意味を含む「超意味」、さらには意味・無意味をもはや問わない「脱意味」などの概念も、入れ子モデルの中に位置づけました(浦田、印刷中)。
意味の源とそのつながり
「人生の中で大切なものは何ですか?」、「何があなたの人生を意味あるものにしていますか?」などの問いをもとにした各国での調査では、喜びや快楽、家族関係や恋愛関係といった「生活の意味」の次元から、人類の進化への貢献や世の中への奉仕、神への信仰やスピリチュアリティといった「人生の意味」の次元まで、幅広い「意味の源(sources
of meaning)」が見られています。そこで、現在は入れ子モデルとこれらの知見を基にしつつ、意味の源に関する尺度(Important
Meanings Index: IMI)を作成し、それぞれの意味の源を追求する程度や実現している程度、およびパーソナリティや心理的健康との関連などを検討しています。
しかし、人が自らの人生に意味を感じるとき、一つの意味の源で十分ではないことが多いのではないでしょうか。たとえば、「恋愛関係によって喜びと快楽を感じている」「神への信仰に基づいて世の中に奉仕し、それが自分の喜びにつながっている」というように、意味の源同士の有機的なつながりによってこそ、人生の意味が深まっていくと考えられます。そのため、今後は、意味の源のつながりを探る意味システム・アプローチの観点を応用しつつ、人生の意味の(再)構築を支援する方法論を構築していきたいと考えています。