若手研究者研究紹介22:
小林 麻衣(東洋大学大学院社会学研究科)

 

 第22回は,小林麻衣先生にご自身の研究をご紹介いただきます.小林先生は現在,東洋大学大学院社会学研究科に在学されており,セルフコントロール(自己制御)に関する研究をなさっています。ここでは,セルフコントロールという概念や学業との関係性,研究のきっかけ,今後の課題や展望などについてご説明いただきました。


学業場面における誘惑対処方略の検討

東洋大学大学院社会学研究科
小林 麻衣

はじめに
 私は現在、「人が誘惑に負けないようにするにはどうすればよいか?」ということについて研究を行っています。例えば、皆さんはこんな経験はないでしょうか?受験勉強をしなくてはいけないのに、つい友人と遊んでしまった。ダイエット中なのに、ついケーキを食べてしまった。節約をしなくてはいけないのに、つい衝動買いをしてしまった…などなど、人が誘惑に負ける状況をあげるとキリがありません。しかし、自分にとって重要な目標はいつかは達成しなくてはいけませんし、目標を妨げる誘惑に常に負け続けるわけにはいきません。誘惑に負けずに目標を達成するためには、自分自身をコントロール(自己制御)する必要があります。このように、人は誘惑に負けずに目標追求を促進させるために、自分自身をコントロールするための方略(自己制御方略)を使用していると考えられます。

学業場面における誘惑対処方略の検討
 現在取り組んでいる研究では、学業に関する「目標」と、その目標を妨げる「誘惑」が葛藤したときに、人はどのように自己制御方略を使用し、目標達成を導いているのかについて検討しています。私の研究では、人が複数の自己制御方略を複合的に使用し、柔軟な自己制御メカニズムを働かせていると仮定しています。大学生を対象とした最近の研究結果では、複数の自己制御方略として、人は「誘惑対処方略(目標意味確認方略・気分転換方略・誘惑回避方略・目標実行方略)」を複合的に使用することで、目標追求を促進させていることが明らかになっています。つまり、いくつかの自己制御方略を連続的または同時に使用することで、自己制御を成功させていると考えられます。

現在の研究をはじめたきっかけ
なぜ学業場面の自己制御に関心を持ったかというと、学業に関する目標を追求することは多くの人が経験していると考えられるからです。早ければ幼少期から一生を通じて、人はなにかしらの学業に携わる機会をもっています。こうした様々な学業の機会で、誘惑に負けずに目標達成を行うことで、より人生を豊かにすることができるかもしれません。そこで、学業場面の自己制御についてより詳しく検討していきたいと考えるようになりました。


最後に
 学業場面における誘惑対処方略の検討については、今後取り組むべき課題がたくさんあります。また、今後は、学業場面に限らず、他の自己制御場面(健康、恋愛など)についても、人間のより柔軟な自己制御メカニズムについて検討していきたいと考えています。

 
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