インタビュー企画11:浮谷理事長

 第11回は本学会の理事長でもある東京富士大学の浮谷秀一先生にインタビューをさせていただきました。1人のパーソナリティ研究者としてだけではなく、理事長としても、パーソナリティ心理学との関わりや日本パーソナリティ心理学会に対する想いを語っていただきたいと思います。

■ パーソナリティ心理学に出会うまで

―――では早速ですが、浮谷先生が心理学を志した経緯について聞かせていただけますか?

 高校の頃に錯視図形を知って、実際の長さよりも短く見えたり長く見えたりするところに人間の不思議さを感じたのが最初に心理学に対して興味を持ったきっかけですね。大学ではそういったことを学ぼうと思っていたので、学部では実験心理学を専攻していたし、動物実験などをおこなってきました。

―――最初は知覚の方に興味を持っておられたのですね。

 そうです。でも知覚の分野で実験系の研究を重ねていくうちに、重箱の隅をつつくような研究をしているような気がして、もっと視野を広げて人間を見る必要があるのではないかと思い始めました。で、視野を広げてみた結果、「個人差」というものに行き着き、そこからパーソナリティ心理学のほうへ導かれてきたという感じですね。

―――なるほど。具体的にはこれまでどのような研究をされてきたのですか?

 血液型によって人が異なるのか、ということも興味がありましたが、自分としてはEI(Emotional Intelligence)やEQ(Emotional Quotient)といったことを中心に研究してきました。細かい内容についてはここで話せませんが、やはり人間の感情というものに関心があったということです。以前から感情に注目して人間を捉えていくという視座の重要性を感じていたんだけど、当時はあまりそういう研究がされていなかったような気がするんです。従来の性格検査では捉え切れていない部分に対する想いがずっとあって、そこからパーソナリティ心理学に入っていったという感じかもしれないですね。


■ 個を大事にするパーソナリティ心理学であれ

―――日本パーソナリティ心理学会の若手研究者に向けたメッセージとかありますか?

 現在は人間の行動を説明する時に、何かというと理由を脳に還元したがる風潮があると思うんですが、パーソナリティを研究する心理学者はそういった脳科学ブームとは一線を画して、人間の心理を真摯に研究していく必要があると思います。もちろん科学的根拠である数値やデータも、そういった数値やデータを扱う研究もなくてはならないものです。しかし、パーソナリティを研究しようとする心理学者は、それらを踏まえたうえで、「個」を大事にしながら研究して欲しい。それがパーソナリティ研究の魅力だと思うし、パーソナリティ研究をしようとしている心理学者の果たすべき役割でもあるのではないかと感じています。
 繰り返しになるかもしれませんが、個を大事にするということは、「一人ひとり異なる」という前提に立って研究するということであり、パーソナリティの研究をする上で最も大事なことなのです。でもそうした個人差については、狭い視野で細かいところばかりに目を向けていたのでは見えてこない。  

―――細かい部分だけを見るのではなく、視野を広げて人間全体を捉えるということですね

 そうです。狭い視野で細かいところばかりを見るのではなくて、視野を広げて様々な角度から人間を捉えようとすることが大事で、そのような研究をしていると見えてくるものが個人差だったりパーソナリティ心理学だったりするわけでしょう。だから、データも大事なんですが、パーソナリティを研究する心理学者は「個」を大事にしながら研究してほしい。特に若い人には広い視野で人間一人ひとりの違いに注目しながら研究を進めていただきたい。
 個人としては、一人のパーソナリティ心理学者として今後も「個」を大事にしながら人間を捉える研究を続けていくつもりです。          
         
■ パーソナリティ心理学の新たな展開

―――日本パーソナリティ心理学会の理事長としても何か一言お願いします。

 日本パーソナリティ心理学会は日本性格心理学会としてから誕生してから来年2011年で20年になるんですが、それを記念して、日本パーソナリティ心理学会第20回大会は日本感情心理学会との合同大会として開催される予定です。時期は2011年8月で、場所は京都光華女子大学の予定です。そこではパーソナリティ研究と感情研究の融合がテーマになるのかなぁと思っています。この合同大会が、何か新しいパーソナリティ心理学の方向性を打ち出す機会になればいいなと現在考えているところです。いずれにせよ20年という節目を迎えて今後のパーソナリティ心理学が向かうべき新たな方向性・可能性を拓けたらいいなと思いますね。
 生誕20年っていうのは、これは人間で言えばちょうど成人式を迎える節目の年。規模の大きな他の心理学会と比べたら日本パーソナリティ心理学会はまだまだかもしれないけど、会員数は800名を超えて、4桁の大台も夢じゃないところまできているわけですから、日本パーソナリティ心理学会理事長としては、記念すべき第20回大会を成功させ、パーソナリティ心理学の新たな展開を導きたい。成熟してきたパーソナリティ研究が今後ますます発展していくことを期待していますし、そのお手伝いができたらいいなと思っています。          

―――本日はお忙しい中インタビューに応じて頂き、ありがとうございました。
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