理 事 長 挨 拶

理 事 長 大村 政男


 学会の『ニュースレター』の誌上ををお借りして二代目理事長就任のご挨拶を申し上げます。

 「日本性格心理学会」の初代の理事長はわが国心理学界の泰斗である詫摩武俊先生であることはご存知のとおりですが,先生を旗幟として少人数ではありますが活きのいい学会を建設したのは新進気鋭の研究者,現にばりばり仕事をしている比較的若い研究者たちでした。このような成立史を持っている学会は,わが国においてはめずらしいことです。ただ,「青年老い易く・・・」といわれているように新進気鋭の研究者もいつのまにか旧来の*晒習の檎になり,ついにはフツウの学会のムードにもどってしまう虞れがあります。それはどうも人間性の通弊のようです。

 幸田露伴は文化勲章の第1回目の受賞者の1人ですが,彼はその祝賀会のおり「文学者は時の政府に対する批判者として存在するのを本来の使命とすべきなのに,その政府から勲章をもらうようになったらおしまいだ」というような挨拶をしたそうです。露伴ですらこうなってしまうのです。わたくしは露伴が文化勲章を拒否しなかったのは偉いと思いますし,自分の気持ちに正直だったことに感心しています。しかし,学会はそのような老化をしては困ります。学会における研究発表の場や研修の場がいつも活気にあふれ,若い人々の論議の場になってほしいのです。

 この学会の中心問題はその名称が示すように「性格」です。心理学のあらゆる分野におけるマスターキーで,現代社会においても,近未来社会においても廃れることのない研究のターゲットです。会員のみなさまは,この上るな重要な学会の発展のためにお一人がお一人の研究者の入会をお誘いくださるようにお願い申し上げます。

 詫摩先生時代と変わらずお力添えください。心からお願い申し上げます。


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