第7回大会を終わって

大会準備委員長 荘厳 舜哉


 前理事長の詫摩武俊先生より,性格心理学会第7回大会を引き受けて頂けないかと正式に依頼を受けましたのが,1995年3月の日本発達心理学会第6回大会の会場でお会いしたときでございました。心理学科を持たない大学なので,このような重要な大会をお引き受けできるかどうかおぼつかないまま,「えい,ままよ」と,荘厳らしく蛮勇でお引き受けしたというのが実状でございます。おまけに昨年1年間(96年3月から97年3月),在外研究でアメリカに滞在していたものですから,全ての連絡を留守中の研究室とのe-mailにておこないながらの準備でした。例えば1号通信を発送した今年3月にはまだアメリカにおりました。このような事情で,先生方には何かとご迷惑をおかけいたしましたこと,まず最初にお詫びをいたします。

 3月末に帰国し,4月早々から中国出張が重なり,1年間休んでいた講義再開に伴うノート作りや大学院での講義準備等に追われ,ふと気がついたら連休明け。慌てて2号通信をお送りしたのですが,何せ先に申しましたような事情で泥縄。おまけに会員総数などの確認を学会本部にせずに,アメリカにいたときに封筒や振り込み票などの印刷手配をしてしまったものですから,1号通信の内容と振り込み票に記載されている内容が違ったり封筒の枚数が足らなかったりで,今から思っても冷や汗ものでございました。  会場に関しましてもドタバタでしたが,幸いにも当大学が位置しております吹田市にメイ・シアターという文化ホールがありまして,ここをお借りできることになり,9月8・9の両日を無事乗り切ることができました。これも一重に,思いがけずたくさんご出席いただきました先生方,及び,「しゃーない,助けたろか」と準備委員としてお手伝いいただきました近隣の大学の先生,更に本学の谷口,中,両先生のおかげであると感謝しております。  さて,当日でございますが,大阪というハンデキャップにも負けず,ポスター発表は昨年とほぼ同数の37タイトルがエントリーされ,特に初日は大変にぎわいました。中でも早稲田大学人間科学部からは10タイトルのエントリーがあり,これは全体の発表件数の27%に当たるわけですから,青柳先生の強いお勧めがあったことと深く感謝しております。

 当大会では,準備委員会企画として,「文化とパーソナリティ」というタイトルの下,京都大学の北山忍氏,東京大学の箕浦康子氏,京都女子大学の星野命氏から,タイトルこそ黄ばんでいるかも知れませんが,非常に刺激的な話題の提供を受けました。北山氏は,アメリカの学生と日本の学生を被験者として,それぞれのセルフの捉え方に文化差が認められると言う内容を,箕浦氏からはバングラデシュのような開発途上国において,人々,特に女性の意識の中に文化がどのように息づいているのか,また,近代化を推し進める中でそれがどのように変容しようとしているのかという話題を,ジェンダー論に陥ることなく淡々とお話しいただいたことが印象に残っております。また星野先生からは,日本における文化心理学の系譜を,先生ご自身の研究史と絡めてお話しいただいたことが印象に残っております。

 得てしてこのようなシンポジウムでは,若手が自分の研究を紹介し,それを大家がコメントするという形になりがちですが,それを避けるために今回はあえて反対の方向を選びました。指定討論者としてお願いしたのは従って,本学の谷口君と京都大学助手の村本由紀子氏でしたが,お二人に共通していて感心させられたのはOHP シートを持ち込み,話題提供者の発表に対する質問を実に手際よく整理されていることでした。

 二日目は社会心理学の木下富男氏に,「IQから社会的賢さへ」というタイトルで講演をお願いしました。司会には詫摩先生をお願いしましたが,常に顔を合わせていらっしゃるお二人の呼吸の良さがにじみ出てくる気がしました。木下氏の話は,性格心理というものと社会心理がどこで接点を見つけるかという点に焦点化されていましたが,賢さというものは単に数学ができるとか記憶力がいいということだけではなく,もっと複合した能力の総合で表されるべきであり,いわゆるソーシャル・スキルの研究とパーソナリティ研究が結びつくところに性格研究の新しい転回点を見いだせるであろう,という大意であったと思います。しかしこの問題はあまりにも大きくて,土俵の広い木下氏でも苦労をしているとおっしゃったのが印象的でした。

 現理事長の大村先生や理事の諸先生,また学会事務局の文京女子大学の先生方を初めとして,本当に多くの会員の先生方のご協力を頂いたおかげで,何とか無事に大会を終了できましたこと,関係各位の方々や手伝ってくれた学生諸君に,最後にもう一度感謝の意を表しましてお礼の言葉としたいと思います。


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