巻頭言   これからの10年

副理事長 青柳 肇(早稲田大学人間科学部)

 日本性格心理学会は、1992年6月に設立され、第1回大会が同年11月に日本大学で行なわれました。ですから、設立10周年を迎えたことになります。

 正確に覚えておりませんが、最初は100〜200名の会員でスタートしたのだと思います。手許の第1回大会の論文集を見ますと、記念シンポジウム「性格研究のこれからの課題」、特別講演「ある生理心理学徒が性格心理学に期待するもの」、ラウンドテーブル8件、ポスターセッション37件、呼びかけセッション14件でした。それから9年後の昨年(2001年9月)は、東洋大学で第10回大会が行なわれました。10回大会のプログラムは、ずっと厚くなりました。講演会「現代人に特徴的な性格はあるのだろうか」、レクチャー(小講演)2件、シンポジウム2件、ポスター発表41件、口頭発表23件、ワークショップ3件になりました。仮にポスターセッションと口頭発表(第1回大会にはありませんでした)を比較すると約2倍に増えたことになります。会員数は、ようやく600名を越えました。機関誌も設立当初は、年1回の発行でしたが、年2回になりました。学会の規模からすると年2回の発行はよくやってきたという印象を受けます。

 過去10年間の歴史を反省し、これからの10年の学会運営に生かしたいと思っています。そのひとつとして、理事会では、学会名の改正や学会の研究活性化ための組織の見なおしも検討されはじめました。熊本(九州ルーテル学院大学)で行なわれる第11回大会では、学会名称の変更を1年かけて検討しようということが議題のひとつに挙げられるでしょう。学会の名称は、いわば看板ですから、そんな簡単には変えられません。ただ、機関誌や大会で発表される多くの研究を包括し、現在をよりよく代表する名称は、望ましいことなのだと思います。ですから、今後1年くらいかけて会員の皆様に検討していただきたいと思っています。

 また、研究活動の活性化も必要なことだと思います。先に記したように第1回大会では、呼びかけセッションという大会発表ジャンルがつくられました。このジャンルは、本学会が他の学会に先駆けて作ったものです。当時の常任理事の提案だったのですが、個々人が研究をたこ壺に入って行なうのではなく、同学の士を募って共同研究を行なえるようにと願って作られたものでした。この提案を実行に移したのは、良かったのですが、いつのまにか消えていきました。

 このひとつの原因は、学会自体が側面からサポートしなかったことにもあった気がします。近年のいくつかの心理学関連学会では、分科会や研究会をサポートしていこうとする動きがあります。個人がそうした組織を孤立無援で運営していくのには、経済的にも労力的にも大変なことだと思います。個々人の研究活動を活性化することは、学会活動の活性化につながっていきます。その意味では、学会を下支えする研究活動組織を充実させていくことは今後の本学会の大きな役割であると認識しています。しかし、決して学会が主導権を握って行なうのではなく、個々の会員のなかから生じた内発的な研究活動を学会が側面から支えようという考えであります。

 こうしたことを通じてこれからの10年を学会員の皆様にとって魅力的な学会にしていきたいと思っています。


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