理事長挨拶
「日本パーソナリティ心理学会」会員の利益と 開かれた学会運営を目指して
理事長 杉山憲司(東洋大学社会学部)

 このたび、「日本パーソナリティ心理学会」の出発とともに理事長に就任いたしました杉山です。どうぞよろしくお願いいたします。

 私としましては、学会名称変更を機に、開かれた学会として、これまで以上に、
1)人類学、社会学、生命科学、進化学などの近接領域との交流を深められたら、
2)性格に限らず、知性や創造性、測定論などを含めた複合的で多様な個人差に関わる諸領域の研究を結集できたら、
3)気質研究などで考慮される生物・進化的要因に加えて、文化・社会・文脈的なパーソナリティの形成過程を含めた、総合的な研究視点が活性化できたら、
更に、
4)12回大会で集中的に討議されたナラティブ分析や質的分析などを含めた、新たな研究法の可能性を探ることができたら、
と考えています。このように、「日本パーソナリティ心理学会」を舞台に研究が活性化され、その成果が機関誌に投稿されることを期待しています。

 「日本パーソナリティ心理学会」は、30以上ある心理学系単科学会にあって、人間の多様性や個人差、その形成過程などを扱う関係上、心理学系学会のcrossroadに位置しています。その意味では、心理学を目指すすべての院生・研究者が何らかの形で関わり、あるいは、パーソナリティ研究のproperとして関心を持っていただける学会になれたらと考えています。また、心理学の諸資格に関しては、当学会は心理学界の一翼を担うべく、学会連合資格「臨床発達心理士」認定運営機構に参加しています。変動する社会にあって、資格が個人にとってキャリアアップにつながることを考えると、学生が資格を重視するのはもっともなことだと思われます。そこで、資格制度に起こりがちな利権化と、基礎と応用の二項対立を乗り越えていくため、「研究」に加えて「資格」、「教育」、「行動指針」を統合的に議論する必要があるのではないでしょうか。このような問題についても、会員の皆様のご意見をうかがいながら、広く社会に向けても発信したいと考えています。

 以上のような問題意識の基に、理事の諸先輩と共に、学会運営に当たっていきたいと考えています。具体的には、第1に、会員あっての学会であり、理事会は、会員の付託を受けて決定・執行に当たるわけですから、会員に対する各種情報の開示とアカウンタビリティ(説明責任)に努めたい、第2に、意思決定に当たる、どちらかと言えばトップダウン的な常任理事会と、日常的活動に当たる、どちらかと言えばボトムアップ的な各種委員会とを統合的に、最大の力を発揮できるような体制・システムを作りたい、第3に、その時々の諸課題に対しては、1、2年の短期の委員会(プロジェクトチーム)を立ち上げ、会員の衆知を集めたい、などです。

 現在、以上のようなことを考えています。会員諸氏のご指導・ご協力をお願い申しあげます。


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