【ミニ特集 国際研究の裏話】
韓国の唐辛子と日本のわさび
金 美伶(お茶の水女子大学大学院)


  私は青年期の精神的健康に関して韓国と日本の比較研究を行なっています。韓国と日本は文化的共通性が多い国ですが、両国民性には根本的な違いも存在していると思います。ここでは、精神的健康にも関わる両国民の気質を、キムチの唐辛子の辛さと寿司のわさびの辛さに例えて考えてみたいと思います。
 韓国といえばキムチ、日本といえば寿司がまず、頭の中に浮かびます。キムチは紀元前12世紀に中国の周時代から始まり、韓国には約2千年前の三国時代に伝来したとされます。キムチは白菜と大根を主材料に唐辛子粉、にんにく、ねぎ、生姜、からし菜、塩辛など多くの副材料を一緒に混ぜ合わせて作るので独特の香りと味が出ます。キムチはビタミンとミネラル、蛋白質などが多量に含まれているので、栄養面でも韓国人の食卓に毎日欠かせない食べ物です。しかし、唐辛子の辛さに慣れてない日本人にとってキムチは、キムチの美味しさを味わう以前に、ただ口から火が出るほどの辛い食べ物に過ぎない印象だけあるかもしれません。私も寿司を食べた時に白飯の中にひそかに挟み込まれていたわさびの辛さに涙をぼろぼろ流し、本当の寿司の美味しさを味わうどころではありませんでした。
 おもちゃの電車のようにぐるぐる回る回転寿司、小皿に赤や黄色、白、青などの、可愛いお寿司が二つずつ乗せられどんどん回っているのを見ると、食べるより目の楽しみでお腹がいっぱいになりました。日本人の細かい部分まで丹念に繊細に作るのを見て、日本人の行動様式にも細かくて慎み深いところがあるのではないかと思いました。日本人は、他人に助けを貰ったら必ず同じような形で返そうとする、本当に礼儀正しい国民です。多分、幼いころから他人に迷惑をかけないように徹底的に教育されているからなのでしょう。自分を強く主張することを抑えて相手に配慮のある、礼儀正しい行動で振舞います。しかし、礼儀正しい面が、他人に対する冷たさにつながるともいえます。他人に迷惑をかけないことは、自分にも迷惑をかけないでくださいという表現の裏返しになるからです。こうした日本人の価値観は、他人に干渉せず、他人に迷惑をかけず、結局自分のことだけを考えているのではないかと思われ、何となく寂しくなることもあります。まるで、辛くても辛さの源は冷たい水にある緑色のわさびの辛さのように、日本人の本音とタテマエに慣れていない韓国人は傷つくこともあると思いま
す。
 日本人とは反対に韓国人はあまり遠慮することなく、他人の好意を受け取ることが一般的です。親しい間柄の人に迷惑をかけるからと遠慮すると、かえって怒られることもあります。日本人の中にはこういう韓国人の行動が無礼で大雑把に感じられ、あまり好きになれない方もいるかもしれません。しかし、韓国人の奥の面を理解している日本人であれば、韓国人の暖かい人情に惹かれることもあるでしょう。韓国人は細かく計画することよりまず、行動から始まります。どちらかというと、行動も日本人より、大胆で大雑把だと思います。ですから、韓国の社会は日本の社会より不安定であるのかもしれませんが、その反面、面白くて力動性が感じられると思います。まるで、灼烈する太陽の下で実を鍛えられて来た赤い色の唐辛子のように、試練を乗り越えた諧謔性と暖かい人情が溢れる国民性といえます。
 このように両国民の間には、本質的に気質の差が存在するために、韓国人の気質と日本人の気質のどちらが、良いとか、悪いとかはいえないと思います。両国の文化には長所と短所が存在します。韓・日関係の改善のためにも、お互いに対する正確な理解に基づいて、両国の特徴を生かし、社会の発展に活用していくことがもっと大事なことであると思います。


Homeへ戻る 前のページへ戻る