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神崎 真実(立命館グローバル・イノベーション研究機構 専門研究員)

 第51回は,若手研究者の神崎真実先生に,ご自身の研究についてご紹介いただきます。
神崎先生は現在,立命館グローバル・イノベーション研究機構にご所属され,主に不登校に関する研究を進められています。今回は,神崎先生が研究を始められたきっかけや,現在の研究内容,今後の展望についてご執筆頂きました。

不登校経験者の学校生活と
その支援

神崎 写真

これまでの研究

私はこれまで,不登校経験者等を受け入れる高校(以下,受け入れ校)で,教職員がどのような支援を構成しているのかを検討してきました。子どもが不登校になった場合,多くの学校ではその子に対する個別の支援が組み立てられます。不登校は個人の問題とみなされるため,学校や学級のあり方が問い直されることはありません。一方,受け入れ校では,不登校を関係性の問題とみなし,学校や学級のあり方を変えていくことが目指されます。学校教育で当たり前とされてきたこと(例えば一斉授業や集団生活など)を問い直し,新しい学び方が模索されています。私は,受け入れ校の試みの背景にどのような支援観・学習観があるのだろうと思い,通信制高校や単位制高校でフィールドワークを行ってきました。

研究を始めたきっかけ

受け入れ校に通い始めたのは大学3年生の時で,指導教員のサトウタツヤ先生に通信制高校を紹介していただきました。フィールドに入ってみると,私のこれまでの学校像を覆すような出来事がたくさんあり,面白いと思って研究を続けてきました。修士課程1年生の時には,YPPで発表させていただいたこともあります。YPPでは,とても和やかな雰囲気の中,様々な観点からご助言をいただきました。

現在の研究

現在は生徒に焦点を当て,学校における居方と物語について検討しています。フィールドワークでは,生徒が教室の隅っこでぼーっとしながら立っている様子が観察されることもあれば,溢れんばかりの思いを語る場面が観察されることもあります。生徒の学校生活について知るには,ぼーっと立っていることも含めた身体的な動きや佇まい(居方)と,学校生活の中での語り(物語)の両方を調査し,居方と物語を統合的に捉える必要があると考えています。居方と物語を統合的に捉えることができれば,(学校)適応についての見方も広がるのではないかと思っています。
2017年からは,妊産婦とその子どもを対象とした「いばらきコホート調査」に携わり,縦断的研究のいろはを学んでいます。2018年からは,Social and Emotional Learningの国際プロジェクトに参加し,欧米の心理学理論を輸入するのではなく,各国の状況をふまえて融合していく方法がないか議論しています。様々な研究やプロジェクトに関わることで,自分の問いが少しずつ広がっていくことを実感しています。

今後の展望

今後,さまざまな分野の人と積極的に関わり,コラボレーションをしながら研究を進めていきたいと考えています。共同研究を行うと,問いが膨らんでいくので“私は何の研究者なんだろう?”と思うこともありますが,そうした問いの膨らみが研究の厚みを増してくれると期待しています(期待しているだけで,どうなるのかは分かりません…)。これから,パーソナリティ心理学会にも積極的に参加して学びを深めたいと思っておりますので,どうぞ宜しくお願いいたします。

最後になりましたが,この度は貴重な機会をいただきまして,ありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。