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木村駿介(静岡産業大学スポーツ科学部・講師)

 第59回は,若手研究者の木村駿介先生に,ご自身の研究についてご紹介いただきます。木村先生は現在,静岡産業大学スポーツ科学部にご所属され,主に共食(きょうしょく)に関する心理学的アプローチの研究を進められています。今回は,木村先生が研究を始められたきっかけや,現在の研究内容,今後の展望についてご執筆頂きました。

共食(きょうしょく)に関する心理学的アプローチ

木村駿介

現在の研究を始めたきっかけ

 当たり前のことですが,ヒトは毎日食事をしなくては生きていけません。もちろん,十分な栄養が健康に必要であるということは改めて説明する必要がない周知の事実でしょう。このように「何を食べるか」については,おそらくその重要性を認識していない人は我が国には非常に少ないのではないかと考えます。
 では,「どのように食べるか」という視点ではどうでしょうか。「何を」が示すものがwhat(食べ物の選択)やwhy(栄養の目的)のような生きるうえで必要なものだとすれば,「どのように」はwho(誰と),where(どこで),when(いつ),why(場の目的)といった文化的に重要なものを指すと考えられます。この,「どのように」があまり重視されていないのではないかと考えたことが現在の共食に関する研究を始めたきっかけにありました。

現在の研究テーマ

 私が大学生だった2010年頃には,食育推進基本計画に子どもの共食(きょうしょく)が目標の一つに明記されました。さらには,様々な理由からトイレで食事をする人々,あるいは望まない飲み会への参加など,食にまつわるネガティブな話題が注目を集めている時期でもありました。そのような中で自分自身の生活を顧みた時に,上京した当初には想像以上に寂しさや孤独を感じていたこと,次第に増えていった友人や仲間たちとの「共食の時間」が人生を豊かにしてくれていたことに気が付きました。
 以来,共食を通して人生を豊かにするためには何が必要なのか。あるいは人々のパーソナリティはどのように関係しているのか。例えば「共食と精神的健康は関連するのか」や「パーソナリティは精神的健康に対する共食の影響を変化させるのか」といったテーマについて取り組んできました。

今後の展望

 「いつでも・どこでも」誰かとともに食事をすればいいのだろうか,というのが今後の大きな課題になると考えています。私は共食の重要性を示すような研究をこれまで行ってきましたが,実は一人で食事をしたいと思うときもあります。毎日すべての食事を誰かと共に過ごし,その時間すべてを素晴らしいものとすることは至難の業であると思います。
 これまで行ってきた研究から,共食がおよぼす心理的影響にはパーソナリティとの関連も小さくないことが少しずつ見えてきました。1人ひとりのパーソナリティやライフスタイルを考慮しながら,食事の時間が人生を豊かにするために心理学のアプローチからできることを模索していきたいと考えています。

 最後に,今回貴重な機会をくださった日本パーソナリティ心理学会の皆さまに心より感謝申し上げます。