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インタビュー企画23:二宮克美

第23回は,愛知学院大学の二宮克美先生にインタビューをさせていただきました。インタビューでは,先生が心理学に興味を持ったきっかけ,研究テーマを選ばれたきっかけ, 研究で苦労した経験,現在取り組まれている研究,若手研究者へのメッセージなどをお聞きしました。

――まず,先生が心理学そのものに興味を持たれたきっかけや時期について教えてください

高校3年生の時,当時は理系のクラスに所属し化学の教員を目指していました。ところが,志望校の入試が大学紛争の影響でなくなってしまいました。急遽,進路変更したものの浪人となってしまい,そこで「心で見る世界」,「心の風物詩」(いずれも島崎敏樹著,岩波新書)「人間の心を探求する―私と心理学―」(宮城音弥著,岩波新書)などの書籍に出会い,人間の心に興味を持ちました。そんな中,名古屋大学教育学部でT先生が「人格」を教えておられることを知り,先生の下で学びたいと思い受験しました。

――二宮先生は道徳性の研究で著名でいらっしゃいますが,研究テーマを選ばれた時期などについて教えてください

大学3年生の秋にT先生の指導生になれることが決まった矢先,先生が急逝されました。その後,当時,名古屋大学に赴任されたばかりのK先生の指導生となりました。卒論では,「きょうだい関係と仲間の影響」について取り上げました。大学院では,道徳性の発達に興味をもち,Piagetの道徳的判断に関する研究にテーマを絞りました。

――最初のテーマは兄弟関係に関するものだったのですね。研究者を志すようになったきっかけや時期についても教えてください

卒論で色々と相談にのっていただいたのが,当時,大学院博士課程にいたHさんでした。優秀な先輩方の影響があり,自然と研究者を志すようになっていきました。研究者になろうと決心した時期は,修士課程から博士課程に進学する頃です。大学院時代の同級生の影響も大きなものでした。

――研究で大変だった経験などについて教えてください

学生の頃,研究のため保育園や小学校に入り浸り,子どもにPiaget流の臨床法で面接をしたことです。空き教室を使わせてもらい面接をしていたのですが,冬はとても寒く本当に大変でした。総勢1000名以上の子どもに面接を行いました。 今となっては貴重な経験で,当時の録音テープは今でも捨てずに保管しています。
もう一つ,博士論文の作成をしていた時期です。昭和の時代,旧課程の博士号を取得するのは非常に大変でした。私は30代で提出したのですが,その頃には結婚し子どももいたため,家族が寝静まった後,夜中遅くに論文を書いていました。

――現在取り組まれている研究について教えてください

まず,道徳性,向社会性の発達に関する研究です。ポスドクで「思いやり研究」に興味を持ち,今でも最新の動向をチェックし続けています。
次に,中学生の社会的行動の縦断的研究です。中学生4000名程度の集団に,7時点で調査を行いました。彼らの両親のデータも含まれており,大規模な縦断データです。学会発表もかれこれ95になりました。ただ,縦断データの分析にてこずっています。
最後に,大学生の「学士力」について研究をしています。文部科学省が打ち出している「学士力」を学生が身につけて卒業していったのか,教育心理学的に研究しています。研究の一例ですが,入学式の翌日くらいに,「大学に何をしに来たの」など「学士力」に関する内容の調査を行いました。そして,その4年後,その学生たちが卒業する数日前に同じ内容の調査を行いました。 無記名なので,完全な縦断データではないのですが,大学入学時と卒業時の意識の変化を明らかにしています。

――最後に,若手研究者へのメッセージをお願いします

まず,心理学は,「個」を明らかにすることを大事にするべきだと思っています。統計的なモデルを検討するのは大事なことですが, もっと目の前の一人ひとりを理解することを心がけるべきだと考えています。
最後に,常に研究の最先端を意識して欲しいと思います。チャンスがあれば,できるだけ早い年齢で海外留学をすることをお勧めします。(※先生ご自身も30代の時に,カリフォルニア大学バークレー校で在外研究をされたご経験があるそうです。)

発達心理学会(2014年3月)期間中という大変お忙しいときにインタビューさせていただきました。非常に豪快な先生で,色々な話を忌憚なく聞かせてくださいました。先生のご研究の量・内容はもちろん,研究に対する姿勢には,私自身,色々と反省すべき思いにかられました。 プライベートでは音楽が趣味という先生は,音楽活動にも情熱を注いでおられるそうです。