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高岡しの(関西学院大学大学院文学研究科)

第24回は、若手研究者の高岡しの先生にご自身の研究をご紹介いただきます。高岡さんは関西学院大学大学院文学研究科に在学され、社会的相互作用におけるユーモアのストレス緩衝効果についてご研究されています。ここでは、研究のきっかけや現在の研究状況、今後の展望についてご説明いただきました。

社会的相互作用におけるユーモアのストレス緩衝効果の検討

研究のきっかけ

学部学生の頃、私は個別指導の塾でアルバイト講師をしていました。勉強が苦手というのはもちろん、友達とうまくいかない、学校や家で嫌なことがあるなど、様々なものを抱えて子どもたちは塾に来ていました。そうした子どもたちに接するうち、「少しでも楽しめるように、はじめより少し笑って帰れるように」と強く思うようになりました。その後、人がストレスに上手く対処するのに役立つとするユーモア訓練プログラムの存在を知り、それが実際に臨床現場で軽度のうつ病の方を対象に実施されているということに衝撃を受け、ユーモアと臨床実践を結び付けていくための研究を志すようになりました。

現在の研究状況

ユーモアにはいくつかの異なった側面があり、ストレス緩和に役立つのは一部に限定される可能性があると指摘されてきました。カナダのユーモア研究者R. A. Martinらは、ユーモアを対人的機能と個人内機能の2つの側面からとらえ、他者との関係を良くするような親和的ユーモア(例;友達と冗談を言い合ったりする)、自分の気持ちを調整するような自己高揚的ユーモア(例;落ち込んでいてもユーモアで自分の気持ちを励ます)、他者を批判するような攻撃的ユーモア(例;人のミスをからかう)、自分を卑下するような自虐的ユーモア(例;必要以上に自分をネタにして人を笑わせる)の4つのユーモアスタイルを提唱しています。また、ユーモアが効果的に働くストレッサーとそうではないストレッサーが存在する可能性も同様に指摘されてきました。そこで、現在私は大学生を対象として、普段使用しているユーモアのスタイルとストレスとの関連について研究を行っています。4つのユーモアスタイルがどのようなストレッサーに対してそれぞれストレス反応に関連するかを検討したところ、男女で結果が異なることが明らかになりました。女性においては、親和的ユーモアを多く使用している人だと大学生活や学業上でストレッサーを多く経験していても抑うつや無気力などのストレス反応があまり高くなりません。また、自己高揚的ユーモアを多く使用する人だと、生活環境や身体的健康面に関わるストレッサーを経験したりや対人関係の中で不愉快なことを経験することが多くても不機嫌・怒りといったストレス反応が低いということがわかりました。逆に男性においては、自己高揚的ユーモアを多く使用していても生活環境や身体的健康面に関わるストレッサーを多く経験するとストレス反応が高くなり、同じユーモアスタイルであっても男女で全く逆の結果になることが示されました。つまり、ユーモアとストレスとの関連については性差をはじめ、使用スタイルやその影響について文脈(ここではストレッサー)を考慮に入れる必要があると考えられます。

今後の展望

これまでの研究から、ストレスはじめ精神的健康に有効であるとされていたユーモアスタイルでも、文脈によっては逆にネガティブな影響がある可能性も出てきました。したがって今後は、実際の社会的相互作用の中で、とりわけストレスフルなやりとりの中でどのようにユーモアが使われているのか、あるいは機能しているのか、それがストレス反応や気分などにどのように影響しているのかについて検討していきたいと考えています。