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徳岡 大(高松大学発達科学部)

第44回は,若手研究者の徳岡 大先生にご自身の研究をご紹介いただきます。徳岡先生は現在,高松大学発達科学部に所属され,達成目標理論の視点から人間の動機づけについて研究を進められています。ここでは,研究をはじめたきっかけから現在の研究関心,そして現在の生活と今後の研究の展望についてご説明いただきました。

環境によって変化する動機づけと達成行動についての検討

研究を始めたきっかけ

修士課程に上がってから何をテーマとしようか考えたときに,やる気という目に見えないものを可視化し,研究することが,とても心理学的だと思え,動機づけ研究をすることにしました。今考えれば,安直すぎたなと思います。気持ちの持ちようを変えるだけで,どこまで人の行動は変化するのか,ということに関心があったこともあり,達成動機づけに関する研究をすることに決めました。

修士課程に進学した当時は,t検定,分散分析,重回帰分析,因子分析についてSPSSで解析はできる程度にしか知識がなかったのですが,大学院時代のひょんな出会いから心理統計を勉強し始めました。データの面白さや活かし方,伝え方を考えるようになったのも現在の研究につながっていると思います。

現在の研究関心・研究テーマ

動機づけの理論の中では達成目標理論に関心を持っています。この理論では,課題に取り組む際の目標として,有能さの定義(「自身の有能さを向上させること」と「有能さを証明すること」)と有能さの価(「成功を目指す」と「失敗を回避する」)を組み合わせて個人の達成行動の違いを説明しようとしています。非常に抽象的な目標である分,様々な場面に適用できるのが魅力だと思っています。しかし,理論の発展の中で複雑になっていき現象の説明から離れてしまっているような気がしています。現在は,達成目標理論がどのような行動を説明しうるのか,ということに関心を持っています。

いくつか研究をしてみて興味をもったことは,他者のためにと思うと学習行動やアルバイトでの作業量が増大することです。動機づける外的な要因が増えるから行動が増加するのは当たり前にも思えますが,学習以外に注意が向くことは努力の質や量を下げるという知見が多かったように思います。うまく理論と結びつけられれば,他者からの影響を動機づけの理論の中に組み込めるのではないかと考えたりしています。

現在の生活

授業や学生への対応などで日々が過ぎ,まだ落ち着いて研究を進められるようにできていません。学会や研究会での発表をすることで無理やりアウトプットするようにしています。研究のことを誰かに話せる機会が減っているので,共同研究をしたり,他の研究グループに参画することで他の研究者とのつながりを保ち,ディスカッションしたりできるようにし,研究者でなくなってしまわないように気を付けています。

今後の展望

動機づけ理論やそれに関する現象を異なる角度から捉えられないか考えています。これまでやってきたことについて,認知モデリングや計算論的な方面から捉え直すことに関心があります。ヒトの行動メカニズムの解明に動機づけがどの程度説明力を持つのか検討していきたいと考えています。

最後になりましたが,このような機会を与えてくださった学会関係者の皆様に,そして拙稿をお読みになられた皆様に心より御礼申し上げます。