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久保田晶乃(法政大学大学院人文科学研究科)

 第63回は,若手研究者の久保田晶乃先生に,ご自身の研究についてご紹介いただきます。久保田先生は現在,法政大学大学院人文科学研究科にご所属され,主に外見と欺瞞性認知に関する研究を進められています。今回は,久保田先生が研究を始められたきっかけや,現在の研究内容,今後の研究についてご執筆頂きました。

外見と欺瞞性認知に関する研究

現在の研究のきっかけ

私は大学時代、アメリカの犯罪捜査ドラマに夢中になっていました。なかでも、捜査官が犯人の嘘を見抜いて事件を解決する姿に強く憧れを抱き、彼らのようになりたいと思っていました。幸いにも、当時私は、犯罪心理学のゼミに所属していたため、「他人の嘘を見破る」というテーマで卒業論文を書こうと考えました。しかし、期待に反して、これまでの多くの研究によって、人間は他者の嘘を偶然レベル程度でしか見抜くことができないことが明らかにされていました。
そのような中で、関連論文を探しているうちに興味深い研究に出会いました。それは、女性の外見的魅力と欺瞞性認知の関係を検討したもの(Murai et al., 2018)でした。欺瞞性認知とは、他者に対して感じる「嘘っぽさ」のことです。その研究では、魅力的な女性はそうでない女性に比べて「嘘っぽさ」を低く認識される可能性があることが示されていました。非常に興味深い結果でしたが、同時にいくつかの疑問も湧きました。もしそうであるならば、外見的魅力を利用するような恋愛詐欺師は、魅力的な人物であることが多いのではないか、また人々は美人局のようなケースを心配しないのではないだろうかという点です。こうした疑問を出発点として、私は外見と欺瞞性認知の関係について研究を始めることにしました。

現在の研究内容

私は、人々がどのような外見に嘘っぽさを感じるのか明らかにしたいと考え、学部時代からこのテーマで研究を続けています。これまでの研究からは、顔の魅力や幼さが「嘘っぽさ」を和らげる要因となることが分かってきました。また、私が特に関心を持っていた恋愛詐欺師について、彼らが一般の人と比べてどのように認識されるか調べました。その結果、詐欺師は一般人よりも「嘘っぽい」と認識される傾向があることが明らかになりました。しかし、そうであってもなぜ多くの人が騙されてしまうのかについては、まだ解明すべき課題が残っていると感じています。

今後の展望

今後は、嘘っぽさの認知に加えて、嘘や騙しを見破る手助けとなる要因についても研究をさらに発展させたいと考えています。このような研究は、詐欺やテロなどのさまざまな犯罪捜査はもちろん、人々が日常に潜むそういった脅威から身を守ることにも役立つと信じています。将来的には、自分の研究で得られた知見を専門家だけでなく、より多くの方に広めることで、犯罪被害の未然防止や安全な社会づくりに貢献したいと考えています。

最後に

このような貴重な機会を設けていただきました日本パーソナリティ心理学会広報委員会の先生に深く感謝申し上げます。また最後までお読みくださった皆さまにも、心より御礼申し上げます。