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福田哲也(広島大学大学院教育学研究科)

第25回は、若手研究者の福田哲也先生にご自身の研究をご紹介いただきます。福田先生は広島大学大学院教育学研究科に在学され、羞恥表出の観察者についてご研究をされています。ここでは、研究のきっかけや現在の研究状況、今後の展望についてご説明いただきました。

羞恥表出の観察者に関する研究

現在の研究を始めたきっかけ

僕は昔から人に気持ちを伝えたりすることが苦手で,「なんで自分は上手く気持ちを伝えることができないんだろう?」とよく悩んでいました。しかし,自分自身は相手に気持ちが伝わるよう,努力しているつもりだったので,自分のことは棚に上げて「気持ちを受け取る側にも何か原因があるのではないか?」とも思っていました。そのため,コミュニケーションにおける受け手(人の気持ちを受け取る側の人間)に,ずっと関心を抱いてきました。
また,僕は日常生活の中で恥ずかしさを感じることや,それが顔に出ることがとても多いのですが,そんな中で「恥ずかしがっている自分を,周りの人はどんな風に思っているのだろう?」という疑問を抱きました。恥ずかしさについて考えるときも,やはり受け手(羞恥表出の観察者)の視点が気になったのです。こうした関心や疑問が組み合わさり,恥ずかしがっている人をみた人,すなわち「羞恥表出の観察者」というテーマに興味を持ちました。
そして,羞恥表出を扱った論文を実際に読んでみると,その論文には羞恥を表出すると,無表情や他の感情を表出した時よりも,他者から信頼されるといった結果が示されていました(Feinberg, Willer, & Keltner, 2012)。羞恥は本人にとって不快な感情であるにも関わらず,表出することで他者からポジティブな反応を獲得するという点にますます魅力を感じ,羞恥表出の観察者に関する研究を始めました。

現在の研究の状況

研究を行うにあたっては,まず,恥ずかしがっている人(=羞恥表出者)に対して,その様子を見た人(=観察者)がどんな反応をするのかを整理しました。ここでの観察者の反応とは,具体的な行動だけでなく,羞恥表出者に対する人物像評価や,羞恥表出者が考えている内容の推測も含んでいます。
ただし,「恥ずかしがる」といってもその時の表情は様々です。例えば,気まずそうに視線をそらす表情もあるでしょうし,笑ってごまかすような表情も考えられます。恥ずかしがる時の表情によって,観察者の反応は異なるかもしれません。そこで,観察者の反応を調べる際には,羞恥表出者の表情の多様性を考慮した検討も行いました。

ここでは,これまでに行ってきた研究の結果の一部を紹介します。人物像評価において,羞恥表出者は無表情の人と比べて社交的だと評価されやすいことが示されました。さらに,羞恥表情の種類によって社交性の程度に差があることも示されました。具体的には,羞恥表情に笑いが含まれている場合には、そうでない場合よりも社交的だと判断されていました。恥ずかしいと感じる時にどのような表情をするのかによって,他者から与えられる評価は異なるようです。

今後の展望

人が羞恥を感じる場面は様々です。その中でも,これまでに僕が研究で扱ってきた場面は,羞恥表出者が失敗して恥ずかしそうにしている場面でした。しかし,人が恥ずかしそうにする場面は,失敗した場面だけでなく,何かに成功して人から褒められた場面も考えられます。例え同じ人であっても,「失敗して恥ずかしそうにしている」場面と「人に褒められて恥ずかしそうにしている」場面とでは,その人に対する観察者の反応は異なるかもしれません。そこで今後は,人から褒められて恥ずかしそうにしている場面も用いて,羞恥表出者に対する観察者の反応を検討していく予定です。
こうした研究を通して,羞恥を表出することが観察者からどのような評価や推測,行動を引き出すのかについて明らかにしていきたいと考えています(個人的には,こうした研究を進めていく中で,恥ずかしがることに良いことがあると示せたら僕自身も助かるなあ・・・と思っています)。

最後になりましたが,このような貴重な機会を与えてくださった日本パーソナリティ心理学会関係者の皆様,最後まで文章を読んでくださった皆様に,厚くお礼申しあげます。