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赤松 大輔(名古屋大学大学院教育発達科学研究科)

第43回は,若手研究者の赤松 大輔先生にご自身の研究についてご紹介いただきます。赤松先生は現在名古屋大学大学院教育発達科学研究科に所属され,英語学習における学習観に関するご研究を進められています。ここでは,赤松先生がご研究を始めたきっかけや現在取り組まれているご研究の内容,今後の展望についてご説明いただきました。

英語学習における学習観の機能と形成過程に関する研究

現在の研究のきっかけ

高校時代,テストや大学受験に向けて友だちと勉強をするなかで,「この単語はこういう風にしたら覚えやすかったよ」だとか,「みんなで一緒に勉強すると集中できるね」だとか,いろいろな方法を教え合うことを通して,学習方法が身についていった記憶があります。ただその一方で,みんなが良いと思う学習方法であっても使おうとしない友だちがいたり,学習方法よりも学習量が大事だと言ってひたすら同じやり方を繰り返す友だちがいたりもしました。人それぞれ考え方が違うのは当然ですが,学習場面においても,そのような「考え方のタイプ」のようなものがあることに興味を覚えました。大学で卒業論文の執筆に向けて準備するなかで,このような学習に対する考え方は「学習観」という概念として取り上げられていることを知り,学習観に関する研究を行ってみたいと思ったのがきっかけです。

現在の研究について

国際化に伴って英語教育の重要性が年々大きくなっていることを受け,現在は,英語学習に対する学習観に関する研究を中心に行っております。学習観とは,「学習の効果を高めるために,学習者が何を重視しているか」ということを指す概念です。英語学習では,実践的な場面で英語を使用することによって英語習得が促されることが示されています。また,当然ながら英語がひとつの言語であることも考えると,コミュニケーション場面をはじめとした実際の生活場面において英語を活用していくことが英語学習の特徴に適った学び方であると考えることもできます。その一方で,生活場面で英語を活用していくことを重視する「活用志向」という学習観が,実際に英語学習を行う生徒に身についているのか,そのような学習観をもつ生徒がどのように学習を行っているのかについては,明らかになっておりませんでした。

私の研究では,活用志向という学習観をもつ生徒が,どのような学習方法を用いているのか明らかにすることを最初の目的としました。その結果,活用志向をもつ生徒が,効果的な学習方法を用いて,なおかつ学業成績もよいことが明らかになりました。
また,どのような要因が活用志向を高めているかに関する検討も行いました。その結果,英語を身につけたいという目標をもっている人や,深い認知的処理や音声による記憶を伴う勉強方法の実践経験がある人の活用志向が高いということが明らかになりました。
これらの研究を踏まえ,直近では,学校でどのような授業を行うことによって,生徒の活用志向が高められるのかについて検討を行っています。まだ進行中ではありますが,友人と協力する活動や英語を用いてプレゼンテーションを行う活動を取り入れた授業によって,活用志向が高められるという結果が得られています。また,そのような授業の効果は,授業を受ける個人の動機づけなどの個人差変数によって変化するという結果も得られています。

今後の展望

「現在の研究のきっかけ」とも関連しますが,今後の研究では,「学習観や学習方法が友人の間でどのように伝わり,定着していくか」ということに関して検討していきたいです。例えば,みんなが効果的と思うような学習方法があれば,多くの友人を介して伝わっていくと考えられます。また,成績が良い生徒や周囲の人気のある生徒がいる場合に,その生徒を中心として,多くの友人に学習観や学習方法が模倣され拡がっていくかもしれません。授業というフォーマルな場面のみならず,このようなインフォーマルな形を通して,友人間で学習観や学習方法が伝え拡がっていくプロセスについて,詳細に検討していきたいと考えております。

最後に

私は,教育実習やボランティア,非常勤講師としての勤務を通して,多くの生徒さんに出会い,自分が成長するきっかけをもらいました。特に,公立高校で非常勤講師として務めた1年間では,学校での日々を懸命に生きる生徒さん,また彼らの頑張りを支える先生方の姿を何度も目にしました。教育現場で関わった方々に対して少しでも恩返しできる研究ができるように,常に手を緩めずに研究を行っていきたいと考えております。
最後に,広報委員の樫原 潤さんをはじめ,本稿を執筆するご機会を賜りました日本パーソナリティ心理学会の皆さまに心から感謝申し上げます。今後とも,ご指導とご鞭撻のほど,よろしくお願いいたします。

名古屋大学大学院教育発達科学研究科
赤松 大輔
個人ホームページ (researchmap): https://researchmap.jp/daisuke_akamatsu/