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古賀 佳樹(中京大学大学院 心理学研究科)

 第50回は,若手研究者の古賀 佳樹先生に,ご自身の研究についてご紹介いただきます。古賀先生は現在,中京大学大学院心理学研究科にご所属され,主にゲーム依存に関する研究を進められています。今回は,古賀先生が研究を始められたきっかけや,現在の研究内容,今後の展望や,また古賀先生の研究に対する想いについてご執筆頂きました。

ゲーム依存に関する研究
—関連要因と依存・回復プロセスの検討―

古賀 写真

研究を始めたきっかけ

物心ついた時からゲームに触れていて,ゲームが好きで今現在に至っております。心理学の大学を受験したのも,倫理の教科書に載っていた用語(アニマとかアーキタイプとか)がゲーム内にも出てきていて興味が湧いたといった理由からでした(それと当時読んでいた小説に臨床心理士がかっこよく書かれていたのも影響していたかもしれません)。大学に入ってからも「心理学部に入ったからには院に進もう」とこれまた浅い理由でしばらくすごしていたかと思います。大学で一番興味をもったテーマが「死」に関するもので,ちょうど私のゼミ選びのタイミングで死生観や自殺予防に関する先生がいらっしゃったので喜んでそのゼミに入りました。卒論も初めは死をテーマに考えていたのですが,「ゲームに関する研究ってあるのか?」と検索したところゲーム依存の研究を発見。さらに日本ではあまり研究が進んでいなかったこと,院進学のため早めに卒論に着手しようとの先生からの後押しがあったこともあり,ゲーム依存尺度開発の研究を始めました。自分の好きなものをテーマに研究できることが楽しく,これが大学院で研究をしたいと強く感じた第一歩だったと思います。

現在の研究

ゲーム依存と自殺予防やメンタルヘルスを絡めて研究を行っております。ゲーム依存は最近WHOがICD-11に取り上げたこともあり,世界的に注目されてきているテーマでもあります。現在はゲーム依存に関連して生じるメンタルヘルスの低下や自殺リスクの問題について質問紙調査を中心に検討をしています。自殺リスクについてはThomas Joiner の自殺の対人関係理論の観点からゲーム使用とのかかわりを調べており,ゲーム使用の様々な側面(ゲーム依存,ゲームの暴力性,時間等)がそれぞれ別に自殺のリスクに影響するのではないかと考えております。
また,実際のゲーム依存経験者への縦断的なインタビューによる研究も進めており,依存および回復のプロセスを,その人の背景も考慮しながら丁寧に分析しているところです。こちらも自殺リスクとの関連や,回復への示唆など興味深い結果が出ておりますので,学会や論文でご報告できればと思います。

今後の展望

現在コロナの自粛ムードの中で,引きこもりがちになりネットやゲーム依存の問題も大きくなっているといった話もあり,そちらについても現在進めているものと並行して調査を進めていこうと考えております。
今後も様々な視点から,ゲーム依存の問題についてアプローチしていきたいと考えております。可能な限り現場から遠ざからないような研究をすることを心掛け,最終的にはゲーム依存の治療や予防教育といった形で社会に還元できるようになりたいと思っています。

自分探しとしての研究

私自身はゲーム依存ではない(と思っている)のですが,当事者にインタビューをするとかなりの部分で共感できたり,同じような経験をしていたりで,「私もそんなにかわらないんじゃないか?」と不安に思うことも多々あります。しかし不安を感じる反面,そういった気づきをえられた喜びもあり,これが自分の好きを研究することのメリットなのかなと考えております。研究をすることが私にとってのゲーム依存予防であり,成長機会なのだと思う今日この頃です。

最後に

私のはじめての学会発表はパーソナリティ心理学会でした。大会前日のヤングサイコロジストプログラムでは,初めての研究交流を行い,会のポスター発表でもたくさんの先生方に私の発表を聞いていただき,また意見をいただき,その時の楽しさは今でも覚えています。この経験が今日までの研究につながっているのだと思っております。
今回も日本パーソナリティ心理学会広報委員の先生方をはじめ,このような貴重な機会を与えてくださいました日本パーソナリティ心理学会のみなさまに心から感謝申し上げます。最後までお読みいただきありがとうございます。