日本パーソナリティ心理学会第17回大会 平成20年(2008年)11月15日(土)・16日(日)会場:お茶の水女子大学(〒112-8610 東京都文京区大塚 2-1-1)

招待講演

招待講演1(一般公開講演)

Dan P. McAdams(ノースウェスタン大学教授)

タイトル
Generativity and the Redemptive Self: Narratives of Social Commitment at Midlife
(次世代育成性と補償的自己:成人期の社会的関与についての語り)

講演者
Dan P. McAdams(ノースウェスタン大学教授)

共 催
お茶の水女子大学 特別教育研究経費
「コミュニケーション・システムの開発によるリスク社会への対応」

概 要
Dan P. McAdams教授は、ノースウェスタン大学大学院の研究科長をつとめ、professor of teaching excellenceとしても表彰されている。専門分野は、パーソナリティや成人の発達、ナラティブ研究であり、150本以上の論文と14冊の著書がある。本講演では、主要な研究テーマのひとつである成人の次世代育成性(generativity)について、ライフストーリーの観点から語っていただく。このテーマについて書かれた著書『The Redemptive Self:Stories Americans Live By』は、アメリカ心理学会より、その統合的な内容に対してWilliams James賞(2005年)を、理論的・哲学的貢献に対してTheodore Sarbin賞(2006年)を授与されている。次世代への関心や関わりの強い成人が、自分のライフストーリーをどのように語るのか、それらの語りに歴史的・文化的な背景がどう関わっているのかについて、多くの示唆を得ることができると思われる。同時に、日本における次世代育成性に、より多くの関心を呼び起こすことを期待したい。

招待講演2(一般公開講演)

Craig A. Anderson (アイオワ州立大学 Distinguished Professor)

タイトル
Media Violence and the Development of Aggressive Personality
(メディア暴力と攻撃的パーソナリティの発達)

講演者
Craig A. Anderson (アイオワ州立大学 Distinguished Professor)

共 催
お茶の水女子大学グローバルCOEプログラム
「格差センシティブな人間発達科学の創成」

協 力
国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)

概 要
Craig A. Anderson教授は、米国アイオワ州立大学心理学部のDistinguished Professorであり、メディア暴力研究における世界的第一人者である。
本講演では、メディア暴力に繰り返し接触することが攻撃行動や攻撃的パーソナリティに及ぼす影響を中心に、お話いただく。これまでに、縦断的研究や横断的研究によって、メディア暴力は後の攻撃的なパーソナリティの危険因子であることが示されてきている。また、実験研究は、攻撃性への影響の心理過程を検討し、社会的認知モデルを支持する結果を示してきた。Anderson教授らの提案した「攻撃性の一般モデル」は、個人、状況、環境、生物学的な要因がどのように攻撃性や暴力に影響するかを示したモデルであり、これまでのメディア暴力が攻撃性に及ぼす影響研究を統合的に説明するものとなっている。本講演では、このモデルについてもお話いただく予定である。

招待講演3

藤永保(日本教育大学院大学学長・お茶の水女子大学名誉教授)

タイトル
「パーソナリティ心理学と言語分析」

講演者
藤永保(日本教育大学院大学学長・お茶の水女子大学名誉教授)

概 要
パーソナリティとキャラクターは、従来それぞれ人格、性格と訳し分けられてきた。しかし、これらは的確に対応するとはいえずむしろ不幸な誤訳というに近い。なぜこのような食い違いが起こるのか。突き詰めて考えれば、鈴木孝夫氏の指摘するように、漢字の持つ造語力があまりにも高く、我々はほとんどの学術語を自在に翻訳できたために日本語だけで西欧の諸学問を学ぶことがほぼ可能になったからといえるかもしれない。それが習い性となり、元の述語と翻訳語が一対一に対応するかのごとくに思い込み、さまざまな誤解を生んでいる例は少なくない。上は顕著な一例だが、他にも、パーソナリティ心理学に関連して、能力、情動、発達など多くの例を挙げることができよう。
こうした現状を考えれば、改めて心理学における言語分析の必要性に気づかされるが、より積極的には、それを一つの方法論として活用することが望ましいと思われてくる。たとえば、固有の用語としての人格や性格の意味内容を分析することによって、この概念の文化普遍性と固有性との両面を知ることができるかもしれない。